「GINZA SIX」開業、変わる銀座 初日ドキュメント



「GINZA SIX」開業、変わる銀座 初日ドキュメント

2017/4/20 10:38 (2017/4/20 21:06更新)
日本経済新聞 電子版
  日本を代表する商業集積地・銀座が大きく変わろうとしている。20日にJ・フロントリテイリングや森ビルなどが手がける商業施設「GINZA SIX(G6)」が開業を迎えた。同施設は松坂屋銀座店跡に、ファッションや服飾雑貨、飲食など241店舗を誘致。仏クリスチャン・ディオールや伊フェンディなどの高級ブランドをはじめ、出店する店舗の半数以上が旗艦店と位置付ける。高級感のある雰囲気で集客しつつ訪日外国人客もターゲットにし、土産物や観光案内などを充実させ日本文化も前面に押し出すのも特徴だ。売り場面積は東京・銀座最大となる4万7000平方メートル。「松坂屋」の看板を捨て、新たなコンセプトで挑む商業施設オープン初日の動きを追った。
「GINZA SIX」の開業セレモニーでテープカットするJ・フロントリテイリングの山本社長(左から4人目)ら=20日午前、東京・銀座

「GINZA SIX」の開業セレモニーでテープカットするJ・フロントリテイリングの山本社長(左から4人目)ら=20日午前、東京・銀座

■午前6時30分

朝の銀座は人通りが少ないが、それでも20人程度の人が開店前から並んでいた。一番乗りは青森県からやって来た女性(60)。シチズンの腕時計「エコ・ドライブ ワン」が5本限定のため、午前4時から並んでいたという。「東京に遊びに来たときはよく松坂屋に行っていた。夫のための腕時計を買った後はゆっくり見て回りたい」と話した。

■7時30分

午前4時30分から並んでいた自営業の鶴巻美智雄さんが並ぶ場所を変えていた。「入り口の前からビルの横に移動させられて寒いよ」。紳士服ブランドの店の開店を今か今かと待ちわびている。

8時すぎ

・8時すぎの銀座。中央通りを歩くビジネスマンの中にはふと立ち止まり、G6の外観をスマホで撮る場面が目立った。「のれん」として位置付けられる仏ディオールや伊フェンディなど高級ブランドの前で、限定商品を眺める年配女性の姿もあった。

・銀座駅から一番奥にある地下1階、地上4階のディオールの店舗脇には朝早くから並ぶ人も。先頭の男性2人組は始発に乗り、5時すぎに到着したという。その理由について、「日本最大級の商業施設と聞いて、とりあえず来て見たかった」と一言。「高級ブランドの限定商品などは知りませんでした。ただ来てみた感じです」とも話した。

■8時30分

開業した「GINZA SIX(ギンザシックス)」に入る買い物客ら(20日午前、東京・銀座)

開業した「GINZA SIX(ギンザシックス)」に入る買い物客ら(20日午前、東京・銀座)

・J・フロントリテイリングの山本良一社長、森ビルの辻慎吾社長らが出席して華やかな雰囲気でテープカットが行われた。Jフロントの山本良一社長は「ようやく開業できてうれしく思う。施設の力に期待している」と話した。

・8時30分時点で店の前に並ぶ人は約50人に膨らんだ。高級ブランドを中心にギンザシックスの限定商品を販売するため、それを目的に来たとの声も聞かれた。ただ、高い注目を集めているだけに、iPhone(アイフォーン)の発売時のように施設周辺に大行列ができるかと思われたが、意外にも静かな雰囲気が漂っていた。かつて浅草に住み、松坂屋銀座店の時から来ているという60代女性は「お目当てはないけれど、今日オープンと聞いて来てみたの。もっと人であふれているかと思ったのに案外少ないのね」とやや物足りない様子だった。

・ディオールやフェンディのほか、仏セリーヌ、伊ヴァレンティノ、伊ヴェルサーチなどもギンザシックス限定の商品を数多く取りそろえる。商品だけでなく、銀座地区の旗艦店との位置付けで各ブランドは力が入る。ディオールは今月16日、晴海通り沿いにあった旗艦店を閉めた。フェンディも銀座松屋前の男女複合店を16日閉店させた。

「GINZA SIX(ギンザ・シックス)」の開業を前に列を作る人たち(20日午前、東京・銀座)

「GINZA SIX(ギンザ・シックス)」の開業を前に列を作る人たち(20日午前、東京・銀座)

■9時30分

・G6の周辺はようやく開店前のにぎやかな雰囲気が出ており、運営側の警備員の声も大きくなっている。

・オープン前に並ぶ人の列が次第に長くなり、ディオールの店から車両が通行する通りまで伸びた。20~30代の女性3人組は「高級ブランドも良いけど、ジョセフの写真展が目的で来た」と話す。モノを買いに来る人々に加え、運営側や高級ブランドが狙う体験する施設、「コト消費」を意識した人も見受けられる。

・競合になる松屋銀座店(東京・中央)で40年近く働いていた佐々木郁夫さん(69)は「食品売り場がどう変わっているか気になる」と話し、列に並んだ。「松坂屋銀座店は庶民的で入りやすい店だった。外観を見ただけで、変わったんだなと感じる」と話す。

・開店を待つ人たちの行列は150人を超え、徐々に増えだした。配布されたG6のパンフレットを見たり、スマートフォンでブランド情報を調べたりしながら時間を過ごす人が目立つ。50歳の男性会社員は「新しく開業するというので来てみた。思ったほど混んではないね。ディオールのカフェに行ってみたい」と話した。

■10時すぎ

・行列は500人を超えた。中央通りが人の行き来が増した。海外からの観光客が目立ち、記者に「これは何?どこに並べばいいの」と尋ねる場面が幾度かあった。

・開店準備が進むG6のライバル、三越銀座店(東京・中央)。「6丁目」に対抗すべく新たに設置された垂れ幕の文言は「4丁目で愛ましょう」。

■10時20分

・予定より10分早く開業した。1階正面入り口では、運営会社の水野和明社長ら幹部が来店客を出迎えた。

■10時30分

・行列は一気に何倍にも膨れ上がった。館をぐるりと囲むように列ができ、1000人は軽く超えた。

■10時40分

・銀座 蔦屋書店の隣にはスターバックスが併設され、店内奥には希少な豆を用いた「スターバックス リザーブ バー」の日本1号店もオープンした。こだわりのコーヒーや限定のマグカップを求めて、50人が列を作った。

■11時

「GINZA SIX(ギンザシックス)」が開業し、にぎわう店内(20日午前、東京・銀座)

「GINZA SIX(ギンザシックス)」が開業し、にぎわう店内(20日午前、東京・銀座)

・店外の入店客列は伸び続け、すでに店に入った人を含めて最後尾で集計した人数は5500人近くに達した。「建物1周以上お待ち頂きます。ご了承ください」とスタッフが呼びかける。訪れた客の中には「もうちょっと様子を見てから行こうか」「こんなに並ぶなんて。入れるなら入ってみたいけど」などの声が出ている。

・仏クリスチャン・ディオールの店内もにぎやか。1階はギンザシックス限定の「ジャルダン ジャポネ」のバッグや洋服を見たり買ったりする人が見受けられた。50~60代に加え、20代女性も多い。2階ではシャンパン片手にショッピングを楽しむ姿も。4階にピエール・エルメと組んだカフェは盛況。すでに50人入る席は埋まり、10人以上が待っている。

■11時30分

・来店客の行列は短くなってきたが、まだ館を半分以上取り囲む。「ただいま入場まで約60分」と看板を持ったスタッフが立つ。館内では中央にある大きな吹き抜けの空間には前衛芸術家の草間弥生さんの作品が飾られ、スマートフォンで記念撮影する来店客が目立った。

・4階の輸入雑貨店「プラザ」の新業態「#0107(オトナ)プラザ」客は女性中心に50人ほど。化粧品コーナーにはファンデーションや口紅のサンプル品を試す客でにぎわう。アロマオイルの甘い香りが店内を充満する。雑貨や菓子は珍しいものが豊富で、包装をじっくり見る客が多い。都内の主婦(35)は「情報番組で知った。いつもいくプラザより洗練されている」と満足げ。併設するジュースバーでは、14種の野菜や果物を使ったコールドプレスジュース(1080円)が人気だ。

■午後0時

・入店待ちの行列は続き、一階の奥まった位置にあるシチズン時計の店には入りたくても入れず、ぐるっと遠回りする手間に。販売員は「たくさん人が来ることはうれしいが、本格的に混むのは13時以降かな」と予想する。それでも究極の薄さを実現した「シチズン ワン」の5個限定品は残り1つという。

・お昼どき、6階の銀座大食堂はランチを求める人でにぎわう。義母、子どもと来店した女性は11時半に入店し、すぐランチに向かった。「本当は親子丼を食べたかったんだけど、コース料理しかなくて別の店に並んでいる」と話した。

■0時30分

・店内を巡回していたJ・フロント傘下の大丸松坂屋百貨店の好本達也社長は「出だしは非常に順調です。多くの人に期待してもらえていたことを感じます。これからも続くように建物に魂を込めて、お客様との関係を構築していきます」と語った。

・仏シャネルが世界で初めて導入した口紅の自動販売機。物珍しさに多くの人が立ち止まり人だかりができた。口々に「面白い」「買ってみよう」との声が聞こえるなか、神奈川県から来た20代女性は12色の中からオレンジ色を選んだ。「いつもは紅色だけど、今日は変わったのを買いました」。価格は税別4200円だ。

■1時

・愛知県からきた50代の主婦は「(大丸松坂屋百貨店が出店した)シジェームギンザで限定で販売しているバッグを買いに来た。入れたらと軽い気持ちで来たら入れて、さらに買うことができてよかった。ついでにトートバッグやポーチも買ってしまった。いろんなお店があるが、ここならではの商品をこのあと探すつもり」と高揚しながら語った。

・地下2階にあるENOTECAでは「ロスチャイルド家のシャンパーニュ」を先着480人で販売。1000円で楽しめるとあって老若男女がグラスを傾けていた。たまたま近くで仕事をしていたという男女4人組は「気になって入ったら楽しくて、シャンパンまで飲んでしまった」と笑う。すぐに会社に戻るようだ。

■1時30分

5階にある米スポーツブランド「コンバース」の店舗では、香港で人気の俳優エディソン・チャンとのコラボ商品を発売。商品を購入すると本人と握手できるイベントを開き、中国人の若い客でにぎわった。香港から来た大学生の車昆木さん(20)は1万8800円のシャツを購入。「それほど高いとは思わない。にぎやかで良い施設だと思う。機会があればまた来たい」と話した。

■2時

競合する松屋銀座店は仏高級ブランドの「ロジェ ヴィヴィエ」の期間限定店を開いて対抗する。外観には「ルイ・ヴィトン」の広告も出すなど、G6には入っていない高級ブランドの存在をアピールする。靴を眺めていた50代の女性は「GINZA SIXのついでに来たけど、靴がかわいいですね」と楽しそうだった。

■3時すぎ

世界最大級のユニクロ銀座店には相変わらず中国人が押し寄せているが、普段はあまり見かけない欧米人の姿も。オーストラリアから観光で訪れた50代男性は「G6に行った後に立ち寄ってみた」と話す。銀座店の店員は「いつもと混み具合は変わらない」と素っ気ないが、世界各国からの観光客でにぎわう日も近そうだ。近くのソフトバンクショップも来店客数が増えているもよう。その理由は「スマホの充電をするため」という。こういったところにも波及効果が出ているようだ。

4時

三越銀座店への来店者は昨年(本日と同じ4月第4週の木曜日)と比べて上回っているという。天候など様々な要因が考えられるが、「G6の開業も影響している」(関係者)と分析している。インバウンド(訪日外国人)の比率も高いことから、「一緒になって来街者を増やすことができたら」と話す。

5時

G6近くで2店舗を運営するラオックスは「銀座本店などは通常よりも盛況な印象だがG6による集客効果なのかは分からない。今後の動向を見極めていきたい」と冷静だった。

6時

客足はやや落ち着いていたが、会社帰りの人が増えてきた。都内の百貨店の商品部で働く女性(25)は「どんな商業施設になってるのか気になって来た。ブランドの並びが百貨店と違って違和感がある。見せることがメーンになっていて、売り上げには執着してないのか」と話す。同行した会社員の友人(25)も「見て回るのは楽しいけど買うかどうかは別。高いから」と笑っていた。

■6時30分

J・フロントの山本良一社長が館内を巡回。「よう(客が)入っとるよ。海外ブランドもええで」と語った。

■7時30分

地下の食料品売り場が混雑。近くで働く会社員の女性(28)は「日本のお菓子でも見たことのないものが買えて満足。外国人客も多くて、店員さんが英語と中国語を自然に話す姿に驚いた」と話す。友人の男性(30)は「高いし、買いたいものはあんまりないですね」と少し疲れた様子だった。

■7時45分

外貨両替機を探して、3人組の女性会社員が走り回る。「場所が分かりづらくて。1度建物から出ないといけないんですね」。近くにある免税カウンターの場所も探すのが難しく、訪日客が「ツーリストラウンジ」のスタッフに尋ねていた。

■8時10分

館内を一巡したファッション好きの男子大学生(24)が「銀座って俺らじゃなくて外国人の方向いてない?」とつぶやく。「普段は表参道で服を買うんです。銀座に来るときは『ドーバーストリートマーケット』か阪急メンズ館に行きます。東急プラザ銀座もオープンのときは行ったんですけど、高いブランドを置いて訪日客に売るって個性がない」。そばにいた友人(23)も「みんな東京五輪後のことを考えてないですよね。こんなに店をボンボン作ったら、将来ゴーストタウンになるんじゃない?」と笑っていた。

■8時30分

「GINZA SIXは午後8時30分をもって閉店します」という館内放送が日本語と英語で流れ、客が続々と外に出る。まだ入店しようとする人もいたが、エスカレーター脇に警備員が立ち閉店を伝えていた。長い1日が終わろうとしている。

G6にある241店舗のうち、旗艦店との位置づけの店舗が121店。日本初となるブランドはカナダ発のスポーツウエアブランド「ルルレモン」など12店で、65店の新業態も導入した。営業初日のこの日は500人以上が列をなし、開店を10分繰り上げたうえ、午後1時近くまで建物の周囲に人があふれるほど世の中の関心の高さを示した。

店内でも人がひしめき合う状況が続いたが、気になったのは人数が多い割に、購入した商品を入れる紙袋を持っている人がそれほど目立たなかった点だ。百貨店であれば同じ紙袋で統一されているが、ここはテナントを集めた商業施設。それぞれのテナント独自の紙袋を使っていることも影響していると思われる。

今後は富裕層の囲い込みやインバウンド(訪日外国人)の集客などに向けて、出店者が一団となって取り組まなくてはならない場面も数多く出てくるはず。単なる個々の店の集合体ではなく、「GINZA SIX」としてのブランドを磨き、アピールすることができるか。新宿や渋谷、池袋など東京の商業集積地だけでなく、大阪や京都、名古屋といった地方の主要都市との競争も激しくなる。G6の成否が銀座エリアの今後を左右する試金石となる。


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