2017年カンボジアサッカー、振るわなかった2017年の結果を2018年の糧に – サッカーキング



1991年生まれ神奈川県出身。青山学院大学を卒業後、経営コンサルティング会社アクセンチュアの日本法人での勤務を経験。その後カンボジア1部リーグに所属する日系プロサッカークラブのカンボジアンタイガーFC(現アンコールタイガーFC)にて勤務。現在はカンボジアプノンペン在住で、同クラブの現地責任者としてカンボジアサッカーの発展に従事。アジアサッカー研究所の一員としても活動中。

■カンボジア初のJリーガー・日本への挑戦と厳しい現実

「カンボジアの英雄」「カンボジアのメッシ」と期待されたカンボジア代表FWチャン・ワタナカ(23歳)は、2017年1月13日にJ3の藤枝MYFCへのレンタル移籍を発表した。

 カンボジア国内選手として初のJリーガーなった同選手は、カンボジアでの数々の個人タイトルをもとに戦力はもちろんだが、ビジネスとしても日本とカンボジアの架け橋になることを期待され話題を集める形となった。しかし、蓋を開けてみれば1シーズンで公式戦出場はわずか天皇杯の静岡県予選とリーグ戦1試合のみにとどまる結果となり、苦しいシーズンとなった。カンボジア全国民の期待を背負った日本への挑戦となったが、この結果を受け、藤枝MYFCと契約満了。2017年11月27日に藤枝MYFCを退団することが発表された。

 藤枝MYFCの公式サイトを通じて同選手は、「初めて海外でサッカーをしましたが、Jリーグは本当にレベルが高いと感じました。藤枝MYFCで学んだ守備は、カンボジアサッカーのレベルが高くなる為にカンボジアの選手たちに伝えたいと思います。今まで本当にお世話になりました。」とコメントした。

 2018年シーズンよりマレーシア、タイなどのASEANの中でもトップレベルを誇る国のリーグがASEAN枠を導入したことを受け、2018年から更なるカンボジア人選手の国外挑戦へのケースが増えていくだろう。

 日本での結果は晴れなかったものの、ワタナカの2017年の日本挑戦は同国の選手の大いなる刺激になったことは間違いない。

■目立った結果を出せなかったカンボジア代表チーム

 カンボジア代表の更なる飛躍にカンボジアサッカー協会が投資する形として、2017年3月にブラジル人指揮官であるLeonardo Vitorino氏をカンボジア代表監督として招聘した。同氏は、就任前はランサン・ユナイテッド(ラオス)を指揮し、ラオス国内リーグで優勝、メコンクラブチャンピオンシップでも準優勝という好成績を残し、カンボジアでも大きな期待を背負っての就任となった。

 A代表においてはフレンドリーマッチ3試合を戦い3戦3敗、公式戦では2019 AFC Asian Cup出場をかけた3次ラウンドの予選4試合を戦い4戦1勝3敗と、計7試合中1勝6敗の結果となった。唯一金星を挙げた相手はFIFAランキングでもカンボジアの上位にあたるアフガニスタンとなった。

 同氏はU23の代表監督も兼任し、2017年8月に行われたマレーシア開催のSEA GAMESも指揮をとった。予選5試合をタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン、東ティモールと戦い、5戦5敗の予選敗退と、中々思うような結果を出せない年となった。2015年のシンガポールで開催されたSEA GAMESの時の戦績は5戦1勝1敗2敗。2023年のSEA GAMES自国開催を目指しているカンボジアとしては前回大会より苦しい結果となった。

 その後、協会との問題もあり同氏は2017年10月に辞任する形となった。Leonardo氏は規律や若手の積極的な起用など今後のカンボジア代表を見据えた展開を積極的に行ってきたが、最終的にこのような形でLeonardo体制は幕を閉じた。その後、2016年まで同国のリーグ優勝経験を持ち、ワタナカも所属していたボンケット・アンコールFC(現ボンケットFC)で指揮の経験があるカンボジア人監督Prak Sovannara氏が代表監督に暫定就任した。

 近年の代表人気は、2018年ロシアワールドカップに向けたカンボジア初の2次予選進出を果たした2015年からであったが、観客数に関しても2015、2016年と比べ2017年は減少した。毎試合5.5万人の観客で埋め尽くされたオリンピックスタジアムには、約3~4万人のみの来場となり、少しずつ代表人気も減少してきている状況である。

 今後のサッカーカンボジア代表としては、試合の結果はもちろんのこと、観客数などマーケティングにおける課題も増え、協会としてどういった一手を打つのか2018年は注目したい。

■最後まで混戦となったMetfone Cambodia League 2017

 2017年は、2015年以来の2年ぶりとなるプレーオフ制度復活となった。2017年2月~2017年12月まで1st leg、2nd legを戦い、終了後、上位4チームがプレーオフ制度でチャンピオンを決めるレギュレーション。プレーオフは、3位 vs 4位、その勝者 vs 2位、その勝者 vs 1位で戦う1発勝負のトーナメント方式となった為、各チーム、リーグ最終節まで上位を狙う死闘を繰り広げた。

 プレーオフが始まる前のリーグ最終節において、上位3位までにナーガ・ワールドFC、ボンケットFC、スバイリエンFCが優勝のチャンスを持っていた。その中で、ナーガワールドFCは最終節で日系クラブのカンボジアンタイガーFC(現アンコールタイガーFC)に逆転負け、スバイリエンFCはカンボジアNo.1のスタジアム、またアカデミーチームに定評のあるプノンペンクラウンFCに負け、ボンケットFCが逆転する形でプレーオフ進出を1位で飾った。この結果を受け、ボンケットFCが2年連続トヨタメコンカップへの出場を果たした。

 プレーオフ進出チームは、4位:ナショナルディフェンスFC(2016年度2位)、3位:ナーガワールドFC(2016年度3位)、2位:スバイリエンFC(2016年度2位)、1位:ボンケットFC(2016年度1位)となった。

 プレーオフは初戦、準決勝共にナショナルディフェンスFCが順当に勝ち上がり、昨年度と同様ナショナルディフェンスFCとボンケットFCが最後の優勝をかけた試合を2017年12月30日にオリンピックスタジアムで行った。

 2017年のナショナルディフェンスFCは、2016年度のメンバーとほぼ変わりなく、外人枠として使用している北朝鮮人選手を中心としたチーム作りを行い、一方でボンケットFCは、ワタナカを2016年から欠くものの、ブラジル人のマイコンが攻撃の中心、日本人選手で以前J3のFC琉球にも所属していた水野輝が守備の中心としてチームを支えた。試合は1-1のまま延長戦にもつれこみ、その後PK戦へ。両チーム11人以上がPKを蹴り、最終的に昨年度王者の意地をみせたボンケットFCがMetfone Cambodia League 2017のトロフィーを2016年に続き掲げる形で幕を閉じた。

 なお、降格は自動降格枠2チームで、CMACとキリボンFCとなり、2部からの昇格はビサカFC、サッカー日本代表の本田圭佑氏が共同経営するソルティーロアンコールFCとなった。

 各チームは2018シーズンに向け、ホームスタジアムの新規建設や、補強が今まで以上に活発に動いている。年々クオリティがあがっているリーグにも注目していきたい。

■フットサルリーグの開幕・CLEAR Arenaの建設

 カンボジアのサッカーにおいて、フットサルは忘れてはいけない存在である。街中にはサッカーコートより人工芝のフットサルコートが圧倒的に存在するカンボジア。夜には若い子供から大人までがこぞって集まりフットサルを楽しむ。現状、カンボジアではアカデミーチームが少しずつ増えてきたが、現在国内リーグで戦っている選手の中には草サッカーならぬ草フットサル出身の選手も多い。そんな中、カンボジア国内にフットサル専用のアリーナが建設され、2017年7月にはカンボジア国内において初となるフットサルリーグが開幕した。本格的な全国規模のフットサルリーグとして開催され、名称は「CLEAR National Futsal Cup 2017」、計20チームが参加した。

CLEAR Arena

 大会、アリーナの名前からもみてわかる通り、UnileverのブランドであるCLEARが冠スポンサーとなった。大会、アリーナ建設はカンボジアサッカー協会主導で進めており、今後のスポーツ界、ひいてはサッカー、フットサル界の発展を目的とした投資となった。

■2023 SEA GAMESへ向けた全国区の若手選手の投資

 2017年5月にカンボジアサッカー協会と大手携帯SIMカード会社のCellcardはパートナーシップを結び、スポーツの促進、トレーニングの提供、地域社会への貢献、2023年のSEA GAMES自国開催に向けた新しいサッカースターを見つけるという目的を目指し、U14,U16の男子、女子選手を対象にチャンピオンシップを開催すると発表した。全25州のU14とU16カテゴリーのチームが選手権に参加し、2017年11月から2018年3月までに試合が行われる。参加者は総勢1000人以上にのぼる規模の大会になると発表した。プノンペンなどの主要都市におけるアマチュアの大会は年々増えてきていたものの、今回の大会においては、バッタンバン、シェムリアップ、バンティミエンチェイ、コンポンチュナンやその他全国の州のチームが、同大会のサポートを受け参加する。全国区規模のサッカー大会はカンボジア国内として初の試みとなった。

 また、各州へのサッカー指導者の派遣や新しいサッカー専用スタジアムの建設が始めるなど、2023 SEA GAMES自国開催に向けた新たな取り組みを加速させる年となった。

文=篠田悠輔
協力=アジアサッカー研究所


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