「ブランド米は高くて当然」はハッタリか? – 日経ビジネスオンライン



 2018年のこの連載は、農産物のブランド化について考えることから始めたい。取り上げるのは、連載の「常連」とも言うべき農業法人、越後ファーム(新潟県阿賀町)を運営する近正宏光氏だ。

 本題に入る前に、越後ファームについて簡単におさらいしておこう。近正氏が稲作に参入するため、同社を立ち上げたのは2006年。当時、34歳だった近正氏は都内の不動産会社に勤めるサラリーマンだった。

 もともと社長の指示で始めた農業だったが、やがて農業こそ自分の本業と思うようになり、越後ファームごと不動産会社から独立した。独立後は資金繰りなどで苦労したが、事業は順調に発展している。

 近正氏が一貫してこだわってきたのは、自社のコメをブランド化することだ。阿賀町という中山間地でしか田んぼを借りることができなかったため、効率的に作って価格で勝負する道は最初からふさがれていた。

 そこで近正氏はコメを丁寧に作るだけでなく、いつ発注が来てもおいしく食べることができるように工夫した。具体的にはコメをモミのまま倉庫に入れた。玄米で保管するのと比べてかさばるが、鮮度を保つことを優先した。保冷には電気ではなく、雪を使い、湿度を高くしてコメの乾燥を防いだ。

前の冬の雪が夏を越しても残っている「雪蔵」。次の積雪を待つ。2017年10月28日撮影(新潟県阿賀町)

プロが認めるおいしさ

 農家の7割がコメを作っている中で、10年余り前に稲作を始めたばかりの近正氏の成果は突出している。連載でくり返し取り上げたエピソードだが、東京都中央区の日本橋三越本店にある唯一のコメ店は近正氏の経営だ。

 日本航空の日本発の国際線のファーストクラスとビジネスクラスも、2016年から越後ファームのコメを使い始めた。もともと「最強のブランド」、南魚沼産のコシヒカリを使っていたが、日航の職員がブラインドで食べ比べた結果、越後ファームに軍配が上がり、切り替わった。

 さらに画期的なのが、東京都港区の高級和食店「くろぎ」が越後ファームのコメを採用したことだ。「日本一予約の取れない店」と呼ばれる同店を運営するカリスマシェフ、黒木純氏は越後ファームのコメにほれ込み、2015年以降は他のルートからコメを仕入れるのをやめた。

 おさらいは、ここまで。ほとんどのコメ農家が「米価は安い」と愚痴り、「もうからない」と嘆く中、驚くべき快進撃と言えるだろう。2018年は次の一手を打つ予定だが、その紹介は別の機会に譲りたい。

 ここで確認したかったのは、越後ファームのコメのおいしさがコメを扱うプロの評価を得ているという点だ。それを踏まえずに今回の取材内容だけ切り出すと、近正氏の言葉は「はったり」と受け止められかねない恐れがある。それを避けるため、越後ファームの実績を駆け足で紹介した。




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