「豊洲市場」に都庁移転で築地ブランドも都民の税金も守れる – ニコニコニュース



ほとんど利用客のいない市場前駅が膠着を象徴 時事通信社
NEWSポストセブン

 豊洲問題で“犯人捜し”よりも大事なことは、隘路に入ってしまった新市場を今後どうするかだ。秘策をネットニュース編集者の中川淳一郎氏が提案する。

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 豊洲市場が本来稼働すべき日から約5か月が経過した。移転準備をしていた築地の業者からすれば、地団駄踏みたくなるだろうし、無駄な税金を日々垂れ流している状態に我々東京都民としても「さっさと有効活用しろ!」と言いたくなる。かと思ったら地下の土壌から基準の100倍ものベンゼンが検出された、との調査結果も出てきた。

 そんな中、3月19日に放送された『Mr.サンデー』でジャーナリスト・木村太郎氏が「豊洲移転はない」と断言した。「トランプが大統領選に勝つ」と喝破していた男のこの一言である。前回は「木村太郎wwwもうろくジジイかよwww」などと嘲笑されたが、今回の「太郎の予言」には真摯に耳を傾けようではないか。何しろ、豊洲のイメージとしては、汚染された空気が市場全体に充満し、「汚染魚」が続々と出荷される場所のようなものになってしまったのだから。

 現在は飲食店の店主が「今朝築地から仕入れたピンピンしたハマチですよ!」と言って客が「オーッ!」とやっているが、豊洲に移転したら店主は仕入れ先を言わず、客が「どこのハマチ?」と聞くと「……豊洲です……」「あぁ……」というやり取りになってしまうのである。長年かけて築いた「築地ブランド」をみすみす捨てることになるのだ。

 いつまでも責任の押し付け合いと犯人捜しをやっていても、得するのは「戦うジャンヌ・ダルク」像をさらに強固なものにし、都議選で圧勝を狙う小池百合子都知事だけである。ならば、都民目線で豊洲の活用法を考えたい。私が提唱するのは「都庁の豊洲移転」である。石原慎太郎元都知事や浜渦武生元副知事、歴代市場長の糾弾に心血注いでる場合ではない。

 連帯責任は嫌いだが、「オール都庁」となって新宿のキングギドラの如き摩天楼から、使い手のない豊洲市場の施設にその機能と職員を一斉に移せばいい。都庁の延べ床面積は第一・第二庁舎・議事堂合わせて38万504平方mで、豊洲市場は51万平方m(敷地面積は40万7000平方m)。

 これまではエレベーターでの上下移動だったが、敷地内の横移動はセグウェイや自転車を活用すればいい。あれだけ多くの職員が一か所に移転できる場所は豊洲だけだ。ただし、運転免許更新センターなど、都民サービスのための施設は新宿に残したまま、とする。

 今回「発展的な別案を考える」という視点から私は休日に現場を歩いてみた。最初は繋がるエリアである豊洲・晴海・月島を合わせて谷中・根津・千駄木の「谷根千」のごとく「月晴豊」(げっせいほう)としてセットで売り出してはいかがかとも思ったが、豊洲→市場→晴海→月島の約5kmを歩き、観光地としての連携は難しいと感じられた。

 まず、豊洲は基本的にはオフィス街&新興住宅地である。休日ともなれば、豊洲公園は若い夫婦と歓声をあげる小さな子供の姿ばかりである。市場付近には何もない。晴海はオフィス街、月島はもんじゃ焼き屋だらけ。散歩道としても情緒もクソもなく、これを一括りにするのは難しい。

 となれば、豊洲単体で考えなくてはいけないが、生鮮食品を扱う場所としてのイメージは地に落ちている。そこでカジノ案やらアリババグループへの売却が取り沙汰されたが、都心から離れた芝浦にあったジュリアナ東京が廃れたことの再現にならないか心配だし、中国資本にあそこまでの巨大な土地を売ることへの懸念もある。

 そこでの都庁大移転である。今回この思いを強くしたのは、ゆりかもめ「市場前」駅の改札で25分待っていた時のことである。一体どれだけの人数が利用するのかを見たかったのだ。市場関係者のために作られたこの駅、一駅隣の「新豊洲」からわずか470mだ。25分の間、上下線合わせ12本の列車が来たが、乗ったのは1人の女性だけ。ランニング中に疲れて乗ったのだろう。降りてきたのは若い男性1人。彼に「この駅の近くに何か特別なものがあるのですか?」と聞いたら「好きなアーティストさんのPVの撮影場所があるんです。『聖地巡礼』です」と語っていた。ちなみに駅員によると、平日は工事関係者が乗り降りはしているようだ。

 気になったのが同駅と市場を繋ぐスカイウォークである。本来ならば、ここを通って市場関係者・見学者・メシを食べたい人がイキイキと歩く場所だっただろうが、シャッターが降りていて、一切入れない。駅員は、「市場が正式にオープンしない限りは降りたままです」と語っていた。

 あぁ無情。キラキラとしたこの施設が一切使われないまま、日々の維持費だけがかかっていく。だからこそ、新宿のキングギドラを超一等地のオフィスとしてさっさと賃貸に出し、豊洲の空白期間にかかった費用を穴埋めしてほしい。また、現在はライブやイベントの「箱」が足りない状況にある。議事堂も連日ライブや芝居を行う場所に変更させれば、これまたガッポリ稼げるだろう。

【PROFILE】中川淳一郎●1973年生まれ。一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。2001年に退社後、ネットニュース編集者、ライター、PRプランナーとして活動。近著『電通と博報堂は何をしているのか』(星海社新書)など著書多数。

※SAPIO2017年5月号




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