若手のホープ、中国人デザイナー5人に質問。「世界で戦うために必要なことは?」 – VOGUE JAPAN



今、ロンドンを拠点に活動する若手中国人デザイナーたちの飛躍が目覚ましい。彼らは皆、名門セントマーチンズを卒業後、数々の世界的アワードにノミネートされたり、NIKEとのコラボを実現するなど、ますます注目を集めている。なぜ、彼らはロンドンにこだわるのか? モード界の華やかな階段を登ろうとしている5名を直撃した。



〈左後方から時計回りに〉ライアン・ロー、スティーブン・タイ、シュウジー・チェン、フーシャン・ツァン、ワンビン・ファン。
今から12年前、中国出身で現在はロンドンを拠点に活躍する、フーシャン・ツァン(HUISHAN ZHANG)がファッションデザインの勉強の為にセントラル・セント・マーチンズに入学した時、校内で中国人の顔を見る事は稀であった。「おそらく中国人学生は3〜4人しかいなかったと思います」。そう語ってくれた彼は最近、ロンドンのメイフェア地区にあるマウントストリートに自身初のフラッグシップショップをオープンしたばかりだ。当時中国において、ファッションデザイナーという職業につくことはほとんど馴染みがなく、その仕事がどんなものか理解する人は少なかったという。「僕がセント・マーチンズに応募した時、ファッションデザインについて中国語で説明することすらできませんでした。実際、中国語で「shi zhuang she ji (時装設計師) 」と言うのですが、私が学生の時にはそれがどんな意味なのか誰も知らなかったくらいです」

フーシャン・ツァン セレブにも愛されるフェミニンなドレスで勝負。
フーシャン・ツァン(HUISHAN ZHANG)
フーシャン・ツァン。

今日のファッション界での人種分布を考えると、当然この点において理解することは難しいだろう。「でも僕が4年後に卒業する時には、クラスのほとんどが中国人になっていました」とツァンは続けた。セント・マーチンズの学生の人種分布の変化は、そのまま中国国内のファッション界の進化を映し出している。5年前、フェミニンなドレスを得意とするツァンが、自身のブランドを立ち上げた時の周囲の反応は極端に懐疑的なものであった。「中国製の高級ブランドなんて、と人々は冗談だと思ったんです」と彼は振り返っている。

フーシャン・ツァン
フーシャン・ツァン 2018SSより。ピンク×ホワイトのシャツドレスからはピュアなムードが漂う。

その頃、特に中国本土ではファッションにフォーカスした中国人の小売専門店はまだ稀な存在だった。しかし今日では主要都市の全てに一つのファッションブティックがあり、それぞれの店舗の取り扱いブランドリストは堂々たるものである。「かつてJOICEが中国進出した時、中国人デザイナーのブランドは僕だけでした。でも現在は、中国にもドメスティックのブランドがあり、国際的に活躍する中国人デザイナーが存在します。人々は、単なる高級志向だけではなく、ライフスタイルとして日々を楽しむことを求めています。だから彼らは貪欲なのです」とツァンは話す。

シュウジー・チェン さまざまなアワードにもノミネートされる実力派。
シュウジー・チェン(Xuzhi Chen)
シュウジー・チェン。
2015年にセントラル・セント・マーチンズを卒業したシュウジー・チェン(Xuzhi Chen)が今年2月に開催されるロンドンファッションウィークに初参戦する予定だ。過去にジョルジオ・アルマーニのサポートを受けミラノで発表し、CFDA (米国ファッションデザイナー協議会)のパートナーとして上海ファッションウィークにて、Wホテルグループとのコラボにも招かれたキャリアを持つ。手編糸と切りっぱなしデニムを使用する彼の複雑なデザインと革新的なテキスタイル技術が彼の特徴だ。

Xuzhi Chen
シュウジー・チェン 2017-18AWより。シグネチャーでもあるデニムのカットオフを繊細に表現した。

チェンは高校時代の美術教師の強い勧めによりセント・マーチンズに進学した。まだ十代ではあったが、彼は海外からの留学生としてファッション業界での成功がいかに難しいかを理解していた。「ヨーロッパでデザイナーという仕事につける中国人の数は多くて5名くらいだと思っていました。当時は高学年の卒業コレクションを見て、それと同じ事を3〜4年でやれるようになることが僕にとって一番重要なことでした」と彼は言う。彼は既にインターナショナル・ウールマーク・プライズやLVMHプライズ、そしてH&Mデザインアワードの候補にも選ばれたことがある。さらに卒業直前にはLane CrawfordやOpening Ceremonyなどのバイヤー達を魅了していたにもかかわらず、彼は「当初、自分がどうすればデザイナーという職につけるかわからなかった」とも語った。

ワンビン・ファン NIKEとのコラボを実現したアーティスティックな感性に期待。
Wanbing Huang
ワンビン・ファン。

昨年注目を集めたNIKE VaporMax スニーカーとのコラボを実現したワンビン・ファン(Wanbing Huang)は、東京の文化服装学院でパターンを専攻した後、さらなるキャリアを積むために、現在セントラル・セント・マーチンズで再びデザインを学んでいる。ビデオアーティストのビル・ヴィオラの作品に刺激を受けるという彼女の表現は、芸術とファッションの境界線を曖昧なものにしてしまう魅力がある。2018年春夏コレクションでは、「水と光の相互作用」からインスパイアされたという。「私にとって、全てのプロジェクトはとてもパーソナルなもDのです。地元の広州の気候と太陽の輝きからも影響を受けています」

Wanbing Huang
2017年、NIKE Air VaporMax をインスピレーションにした制作に取り組んだワンビン・ファン。空気に浮かぶすべてのものを表現したという。

スティーブン・タイ 商学部から一転デザイナーの道へ。
スティーブン・タイ
スティーブン・タイ。

マカオ出身で9歳の時にバンクーバーに移住した中国系カナダ人デザイナー、スティーブン・タイ(Steven Tai)はブリティッシュコロンビア大学の商学部を卒業後、セント・マーチンズに入学をし直した。「バンクーバー時代には徹夜なんてした事はなかったけど、ロンドンでは制作のために三日間も寝ないことは当たり前でした。5年経った今、自分の人生を大きく方向転換したことに気づいたくらいです」

Steven Tai
スティーブン タイ 2017SSより。デニムにあしらったフリルがガーリーな雰囲気。
今日、ツァンやチェンのようなデザイナーたちはロンドンと中国の両方に拠点を設けている。なぜ彼らはこのようなライフスタイルを選んだのか? 「ロンドンで働く中国人デザイナーたちとのコミュニティーが理由のひとつとも言えるでしょう。同じ信念を持つ同士として、ロンドンの市場でどうやって自分たちのオリジナリティを確立するかを理解する仲間がいることは非常に大きなことなんです」とチェンは語る。

ファッション界は常に独特な視点を追求しているが、多様な文化の産物として中国人デザイナーたちがファッションをどのように解釈しているかは、彼らの生い立ちからも見えてくる。中国系海外移民であるタイの場合、幼い頃に彼の生まれ故郷であるマカオから離れるという大きな変化は、彼のコレクションに大きな影響を与えているという。「違う国に暮らすことで、その国の文化を学び、それをスポンジのように吸収してきたんです。ある意味、“部外者”としての自信と楽しみを得た気がしますし、マイノリティとしての立場が僕をオブザーバーにしてくれたのかもしれません」

ライアン・ロー アジアらしさを伝えることがデザイナーとしてのミッション。
Ryan Lo
ライアン・ロー。
ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションの卒業生であるライアン ロー(RYAN LO)は、2017年秋冬コレクションでハローキティとコラボをし話題を集めた。そんなマカオ出身の彼は、かつてイギリスの植民地で過ごした幼少期が彼が立ち返る原点だという。「香港は大英帝国の一部であり、当時文化のるつぼでした。また、中国の伝統を持ってはいるけれど、漫画やアニメをはじめ、日本や韓国、シンガポールの文化にも親しんできました。だから、固定観念もあったり、少し外れていることや面白いことも見せたりと、自分のバックグラウンドを活かした表現できれば良いなと考えています。アジアらしさを伝えることが自分の責任だとも思うんです」

ライアン ロー
ハローキティとコラボしたライアン ロー 2017-18AW。カモフラ柄のファーハットも印象的だ。 Photo: InDigital

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