小山薫堂が語る、思い出の1本 「パテックのワールドタイムは僕の分身に近い時計」 – GQ JAPAN



誰にでも忘れられない時計がある。小山薫堂が、ライフシーンのなかでも忘れられない1本を語る。
文&構成・長谷川 剛 Toru Yuasa Takeshi Hoshi @ estrellas
Author:
長谷川剛

「パテックのワールドタイムは多くの旅を共にした、僕の分身に近い時計です」

港区麻布台にあるオフィスに入ると、小山薫堂さんはオープンスペースで取材を受けている最中だった。それを横目に案内された応接室に入ると、テーブルの上に時計が並べてある。ロレックス、ジャガー・ルクルト、パテック フィリップがむき出しの状態で並んでいて、いずれも適度に使い込まれていて、愛用中であることがわかった。

応接室に入ってきた薫堂さんの第一声は「どうしましょうか?」。思い出の時計を訊く企画だが、”やっぱり”1本に絞りきれなかったようだ。これは想定の範囲内。かつてティファニーの時計をカスタマイズする企画でも、「決めきれない自分の優柔不断さにちょっと呆れるくらいで」と語るなど、考えるプロにして悩むプロでもあるからだ。「思い出に優劣は付けられない」と、この日まで1週間ずっと悩んでいたらしく、そこで会話をしながら、薫堂さんの1本を探っていくことになった。

いま現在も使う頻度がいちばん多いのが、パテック フィリップのワールドタイムだ。薫堂さんのワールドタイム(Ref.5110P-001)は2006年に生産は終了。現在はプレミアが付くレア品番である。プラチナケースのみに採用されるブルーギヨシェのダイヤルが特徴で、歴代ワールドタイムのなかでも特に人気が高い。ところが購入のきっかけは「もともと探していたとか、憧れていたとかじゃないんです」という。時計を買うならこの人からと決めていたデパートの外商担当に、「何か僕の心を揺さぶる時計を推薦して」と依頼したのだそうだ。ワールドタイムについて熱心な説明を受け、レアモデルということもあって興味は湧いたものの……。

「気に入って即決! ではなかったのが本音でした。ただここで僕が買うと言ったらこの人は喜ぶだろうな、と思ったんです。『買います』と言ったときの外商さんの笑顔は今でも思い出せますね。実際に使ってみると、じわじわ良さがわかってきます。派手すぎず所有していて疲れない。でも一目置かれる。この感じが気持ちよくて。ベルトは3回付け替えました」

2本目はロレックスのデイトナ。SSケースの黒文字盤だ。サーキットでポルシェを走らせていた20代にまで遡る。そのとき一緒にレースを楽しんでいた”兄貴分”がデイトナを着けていた。オークションで20億の値がついたことで話題のポール・ニューマン・モデルだった。

「走行タイムを計測するためにストップウォッチ機能を使っていて、その姿がとにかく格好良かったんです。このときデイトナがいつか買いたい憧れの時計になりました」

30歳のとき、デイトナを購入するチャンスが訪れる。ラジオ番組の女性スタッフが銀座の和光に就職、時計売り場の担当になったのがきっかけだった。「彼女のために何か時計を買ってあげよう」と、SSケースの黒文字盤を注文したが……。


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