家族経営のイタリア、個人主義のフランス、親の名声にあやかるアメリカ 二世の活躍で見える各国の特色 – WWD JAPAN.com



 最近のモデル業界は、二世の活躍が目立つ。米「フォーブス(Forbes)」誌が発表した“2017年世界で最も稼いだモデル”にヨランダ・ハディッド(Yolanda Hadid)の娘ベラ・ハディッド(Bella Hadid)とジジ・ハディッド(Gigi Hadid)が姉妹で10位以内にランクインした。「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」の2018年春夏のランウエイではシンディ・クロフォード(Cindy Crawford)の娘カイア・ガーバー(Kaia Gerber)が華々しくデビュー。ジョニー・デップ(Johnny Depp)とヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)の娘リリー・ローズ・デップ(Lily-Rose Depp)やウィル・スミス(Will Smith)の息子ジェイデン・スミス(Jaden Smith)も俳優、モデル、歌手とさまざまな活動を行い何かと話題だ。モデルとエンターテインメント業界で巻き起こるアメリカの二世ブームは、パリやミラノのランウエイでもその波を感じた。

 古くからメゾンブランドが存在するフランスのモード界においては、二世の活躍はあまり見られない。経営に携わる人はいるものの、表舞台に出ることは少ない。家族のつながりが薄いわけではないが、フランスは個人主義が強く、親子であっても別の人間と社会的な立場を切り離して考える傾向にある。その代わり、貴族階級が芸術家の経済支援をするパトロン文化が古くから根付いているため、資産家の支援を受けて事業をはじめる人が多い。ココ・シャネル(Coco Chanel)やイヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、クリストバル・バレンシアガ(Cristobal Balenciaga)も、パトロンの支援なしでは創業できなかっただろう。今でもパトロン文化は続き、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が就任してから、政府はスタートアップ企業の税金を一部減免する法案を成立させ、海外の投資家の関税やビザといった行政手続きもスムーズに行えるよう仕組みを立て直すなど、優遇措置を推進している。

 最近では親と別業種で才能を発揮する二世の名前も耳にする。「アー・ペー・セー(A.P.C.)」創業者の息子ピエール・トゥイトゥ(Pierre Touito)は、24歳にして希少なビオ・ワインと多国籍料理、創作タパスを提供するヴィヴァン(VIVANT)でシェフとして腕をふるう。レストラン激選区の10区で予約が取れないほどの人気を誇り、週末は地元パリジャンたちで溢れかえるほど。また、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)の再来といわれ、現代のパリジェンヌを代表するファッションアイコンであるジャンヌ・ダマス(Jeanne Damas)の父親はビストロ、ル・スクエア・トゥルソー(Le Square Trousseau)のシェフ兼経営者。伝統的なフランスの家庭料理を提供し、落ち着いた雰囲気でローカルに愛される、パリの名店だ。上階の自宅にはキッチンがなく、毎日レストランで食事をし、常連のパリジェンヌたちを見て育ったとジャンヌは語っていた。妹のルイーズ(Louise)もジュエリーデザイナーとしてパリ市内にブティックとアトリエを構えている。

 一方で隣国のイタリアは、「プラダ(PRADA)」創業者の孫ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)と共に「フェンディ(FENDI)」を率いるシルヴィア・ヴェントゥリーニ・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)、「エトロ(ETRO)」のクリエイティブ・ディレクターのキーン・エトロ(Kean Etro)と長女ヴェロニカ・エトロ(Veronica Etro)などは、それぞれ創業者の次男や孫に当たるなど世襲制が多い。「マルニ(MARNI)」創業者コンスエロ・カスティリオーニ(Consuelo Castiglioni)の義娘シンシア・ヴィルチェス・カスティリオーニ(Cynthia Vilchez Castiglioni)は15年に、ミラノ発のジュエリーブランド「アリータ(ALITA)」を起ち上げた。家族のサポートを受け、同業種でビジネスをはじめる例は、イタリアでは多く見られる。家族の結び付きが強く、相続税などの税率が他国よりも低いために家族経営の企業が存続できる環境にあること、そして10世紀頃ヨーロッパのギルド的師弟関係が未だに色濃く残っているためだと考えられる。ギルドとは、職人が作るものの品質維持と、平等な利益配分の仕組みを維持するために商工業者の間で作られた組合のこと。市場の独占を防ぐため職人は、ギルドによって決められた数量の商品しか生産ができないと定められられていた。技術者の身分制度によって、息子が父親に弟子入りする時代が長く続いた。やがてギルドのような社会主義的思考は崩れたものの、イタリアにはまだその名残りがあるようだ。そしてその名残りこそが、卓越したイタリアの職人技を現代につないでいるのだ。

 親の名声は二世にとって、良くも悪くもいつまでも付きまとうもので、多くの場合は環境的な恩恵を受ける。一時的に注目を浴びるケースも多いが、その後の評価や成功や、当人のセンスと努力にかかっていることは言うまでもない。余計な先入観を持たずにその人自身の才能に注目したい。




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